聞きかじりの知識で株式投資を誤解している人は珍しくありません。まずは正しい知識を身に付けることから始めましょう。
株式投資があなたに向いているかどうかの判断はそれからです。

株式投資に関する素朴な疑問に答えます

Q&A項目一覧

株式投資の基本的な仕組み
株式投資のメリットとデメリット
株価と情報
株式投資のリターンとリスク
株式のポートフォリオ
資産配分と株式投資

Q&A項目一覧(細項目)

Q1 株式投資は未成年でもできるの?
Q2 株式投資はいくらから始められるの?
Q3 普通の株式はいくらくらいで買えるの?
Q4 株式はどこで買えるの? 証券取引所?
Q5 株式は土日でも買えるの?
Q6 株式は誰が売っているの? その会社?
Q7 株式を買うと何が送られてくるの? 株券というもの?
Q8 株価が高い会社のほうが儲かっているの?
Q9 そもそも株価って何の値段なの?
Q10 株価は誰が決めるの? 証券取引所?
Q11 株式の取引はどう行われるの?
Q12 株価は一日に何回も変わるの?
Q13 何故、株価は値上がりしたり、値下がりしたりするの?
Q14 株式を持っていると、その会社はどのようなサービスをしてくれるの?
Q15 株式総会の案内が来たら、出席しないといけないの?
Q16 配当金はいつ、どれくらいもらえるの?
Q17 100株しかもっていないけれど、株主優待というのは受けられるの?
Q18 株主には義務や責任はあるの?
Q19 株式投資のデメリットは何?
Q20 株式投資の税金はどれくらいなの?
Q21 テレビや新聞に出てくる平均株価って何?
Q22 平均株価が2万円とかニュースで見るけれど、株価ってそんなに高いの?
Q23 株価を知るには、どこを見たらいいの?
Q24 多くの株価が一緒に値上がりしたり値下がりしたりするように見えるのは何故?
Q25 株価はどのような情報によって動くの?
Q26 株式によって値上がり・値下がりの大きさに違いが出るのは何故?
Q27 その会社の業種は何故大事なの?
Q28 「投資指標」って何?
Q29 投資指標で業績が良い会社は、株価が上がると考えていいの?
Q30 では、投資指標は役に立たないの?
Q31 株式投資がうまく行ったかどうかは、何を見て判断すればいいの?
Q32 株式投資はリスクがあるから、長く続けるのは良くないのでは?
Q33 株式市場が大きく値上がりしそうになったら投資を始め、大きく値下がりしそうになったら投資をやめるのはダメなの?
Q34 テレビや新聞で株式市場の予想を語る専門家の話は信用できないということ?
Q35 株式投資を長期に続けるメリットって何?
Q36 老後の生活のための資産形成は銀行預金のほうが安心なのでは?
Q37 株式投資のリスクって、具体的にどれくらいなの?
Q38 ポートフォリオって何?
Q39 何故、複数の銘柄を持つとリスクが小さくなるの?
Q40 リスクを小さくするためには、株式の銘柄をどう組み合わせたらいいの?
Q41株式のポートフォリオには、何銘柄を入れたらいいの?
Q42 投資に回せるお金はすべて株式に投資したほうがいいの?
Q43 株式の投資信託に投資するほうがいいのでは?
Q44 株式の投資信託の賢い利用の仕方は?

【株式投資の基本的な仕組み】

Q1 株式投資は未成年でもできるの?

はい、法律的には、株式投資に年齢制限はありません。子どもでも株式投資はできます。

ただし、手続きが必要です。株式投資は証券会社に株式口座を開設しないとできません。その際に、未成年者(現在は20歳未満で未婚の者)は親の同意書などの書類を提出する必要があります。つまり「親の同意があれば」という条件付きで未成年者でも株式投資ができるのです。

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Q2 株式投資はいくらから始められるの?

この質問は「いくらあったら買い物ができるの?」と似たような質問です。理屈上は1円あったら、あるいは0円でも買い物ができます。証券会社によって取り扱いが違うかも知れませんが、理屈上は0円でも、株式投資をするための株式口座の開設が可能なはずです。

しかし、買い物をする時と同じに、買う物の値段以上のお金が必要です。

では、一番安い株式はいくらくらいあれば買えるでしょうか? 株価は常に変化しているので、確定ではないですが、最低取引単位(これを「単元株」といいます)の100株を合計1000~3000円くらいで買えるような株式が見られる時もあります。

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Q3 普通の株式はいくらくらいで買えるの?

単元株の100株、最低取引単位のこの株数を購入するのに必要な金額を単元株価格と云います。単元株価格が最も高い株式は500万円以上になります。

日本の証券取引所では3800超の銘柄の取引が可能ですが、10万円あればそのうちの1400銘柄くらい、20万円あれば2500銘柄くらいの単元株が買えます。

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Q4 株式はどこで買えるの? 証券取引所?

証券取引所は株式の取引をする場所ですが、一般の人が行っても取引に参加はできません。そもそも現在の株式の取引は、取引所という建物で行っているのではなく、コンピューター上で行われています。

株式を買う人は自分の株式口座を開設している証券会社を通じて注文を出します。必ずしも証券会社に行く必要はありません。昔は電話で、今ではインターネット経由でスマホからでも注文を送ることが可能です。

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Q5 株式は土日でも買えるの?

証券会社の店舗で買う場合は、そのお店が開いている時間帯に行く必要があります。しかし、できるのは注文をすることだけです。証券取引所は、平日の9時から11時半(「前場」と云います)と12時半から15時(「後場」と云います)の間に取引を行っています。証券会社で受け付けられた注文は、取引時間内であればすぐに証券取引所に送られて取引され、取引時間外であれば、次の取引時間の最初に取引されます。

インターネットを介した注文は、証券会社は土日や祝日でも受け付けるのが普通です。証券取引所の取引時間外ですから、次の取引時間の開始と同時に取引されます。

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Q6 株式は誰が売っているの? その会社?

株式口座に株式を保有している人は証券取引所を介して自由にその株式を売ることができます。そうした人が株式を売るケースが最も一般的です。

それ以外には、証券会社が自身の保有株式を売るケース、会社が追加で株式を発行して売るケース、資産運用会社が投資家から預かっている資金で購入した株式を売るケースなどがあります。これらの注文も証券取引所に送られて、他の売り注文と一緒に取引されるのが一般的です。

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Q7 株式を買うと何が送られてくるの? 株券というもの?

いいえ、送られてくるとしたら、その取引の報告書です。インターネット経由で取引報告を見るように手続きしているならば、それも郵送されてはきません。別のサービスを案内するダイレクトメールは送られてくるかも知れませんが・・・。

紙に印刷された株券は10年以上前に廃止され、現在は電子化されています。あなたがその会社の株主になったこと、誰かの株式があなたの口座に移ったことなどはデータ化され、口座管理機関という組織がコンピューター上で責任を持って管理しています。

何も送られてこなくても、あなたが株式を買って株主になったことはきちんと手続きされているので安心してください。

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Q8 株価が高い会社のほうが儲かっているの?

いいえ、違います。株価の水準が高いからといって、その会社が大きな利益を得ているとは限りません。株価はその会社が発行している株式の1株当たりの値段に過ぎません。

ホールケーキをイメージしてください。そのケーキを6つに切るか、8つに切るかで、一切れの値段は変わりますね? 株価もそれと同じです。会社は自分が発行する株式の数量を自分で決めることができます。同じ価値の会社でも、株式を多く発行している会社の1株当たりの価格(株価)は安くなり、少なく発行している会社のそれは高くなります。

会社が違えば発行している株式数もまったく違うので、株価の水準そのもので他の会社より何かが優れているかどうか判断することはできません。

「では、何で比較すればいいの?」。その答えは、「賢者のポートフォリオ」でチャレンジを続けていくうちに自然に分かります。

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Q9 そもそも株価って何の値段なの?

株式投資の本質に迫る質問ですね? 

Q7でホールケーキの例え話をしました。1切れのケーキの値段は何切れにカットするかで変わってしまいますから、本当に問題にすべきホールケーキの値段です。これは、1切れのケーキの値段に、いくつにカットしたかを掛け合わせれば計算することは出来ます。

会社で言えば、株価が1切れ当たりのケーキの値段に、発行している株式の総数がカットの数に該当します。それを掛け合わせたものを「時価総額」といいます。

時価総額は、その会社の株式をすべて買ったらいくらになるかという数字です。すべて買ったらその会社は完全に自分の財産になるのですから、時価総額はその会社の財産としての価値と言うことができます。

株価は、その財産価値の1切れ(1株)の値段です。

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Q10 株価は誰が決めるの? 証券取引所?

証券取引所には、株式の買い注文と売り注文が集まってきます。変に高い株価で取引すれば売主が有利になり、変に安い株価で取引すれば買い主が有利になります。そうしたことが起こらないように、証券取引所は公正な取引ルールに則って取引をしています。その大原則が「オークション」という取引の方法です。

オークションは、現在ではインターネットで誰でも参加できるほど身近になっていますね。最も高い価格で買うと言った人がその商品を買えるのがオークションです。買い値を提示するのは買い手であり、オークションの開催者は誰がいくらで買うかを手助けするに過ぎません。

株式の取引も同じです。株価を提示するのは買い手や売り手であり、証券取引所はその仲立ちをするに過ぎません。

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Q11 株式の取引はどう行われるの?

株式取引のオークションは、ちょっと複雑です。一つの株式に対して、多くの買い手と売り手の注文が集まってくるからです。オークションですから、最も高い値段で買う人、最も安い値段で売る人が優先です。株式の注文では「指し値」という制度があり、「この株価以下だったら買う」、「この株価以上だったら売る」という注文が可能です。「いくらでもいい」という「成行注文」も可能です。

長くなるので詳しくは説明しませんが、要するに「買い手が納得する最も高い株価」と「売り手が納得する最も安い株価」が一致したところで取引が成立するのです。これを「約定」と云います。

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Q12 株価は一日に何回も変わるの?

新聞やテレビではその日の終値だけを伝える報道が多いので、「株価は一日に一回だけ決まる」と誤解している方もいるかもしれませんね? 買い注文や売り注文の状況によって、取引される株価は一日に何回も変わります。

売買注文の多い株式では、息つく間もないくらいに変化することがあります。コンピューターによる取引処理ですから、そうした処理も可能です。

一日の最後の取引に成立した株価を、その日の「終値」と云います。

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Q13 何故、株価は値上がりしたり、値下がりしたりするの?

Q10とQ11で説明したように、いくらの株価で取引するかは、買い手と売り手の出した注文で決まります。結果として、その銘柄の買い手集団の中の最も強気となった人が株価を値上げさせ、売り手集団の最も弱気となった人が株価を値下げさせる役割を担うことになります。

何故、買い手や売り手の注文価格は人によって異なり、時間的に変化するのでしょうか? それは、その株式を発行する会社の正しい価値、特に将来の価値が誰にも分からず、自分で評価するしかないからです。その会社の将来の価値が他人より高い、あるいは昨日の自分より高いと評価できるような何かがあると、その人は、昨日よりもう少し高い株価で買ってもいいかなと思うようになります。そして株価が上がるのです。株価を変化させるのは買い手や売り手の気持ちの変化です。

この話は、この後も、もう少し進んだ知識として続きをお話しします。

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【株式投資のメリットとデメリット】

Q14 株式を持っていると、その会社はどのようなサービスをしてくれるの?

「株主総会」、「配当金」、「株主優待」などがあります。詳細は、この後のQで順に説明しましょう。

株式を買うということは、その会社の株主になることを意味します。会社のオーナーです。と言っても、非常に多く発行されている株式の中であなたが持っている株式の比率、すなわち持ち分に応じてということですが・・・

あなたはオーナーですから、万が一その会社が解散した時には、処分した全財産から負債を返済した残りの財産を、自分の持ち分に応じて受け取ることができます。

また、株主総会に際して、自分の持ち分に応じた議決権を持ち、議案に賛否の投票をすることができます。株主総会では、配当金の支払いに関する決議に参加し、決定された配当金を後に受け取ることができます。

その他にも株主になると様々な権利が付与されます。

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Q15 株式総会の案内が来たら、出席しないといけないの?

株主総会に出席したり、議案に投票するのは、あなたの権利であり、義務ではありません。欠席しても、棄権しても、全く問題ありません。

 しかし、株主総会に出席するのは苦痛ばかりではありませんよ。株主総会で議案を説明するその会社の経営者は、あなたの株式の価値を高めてくれるべき人です。どのような人かを見ることができますし、どのように会社を運営して行くのか説明してくれます。時間や人数は限られますが、株主には質問の機会も与えられます。お土産がもらえることも珍しくありません。

 余談ですが、投資家で大富豪のウォーレン・バフェットの会社が主催する株主総会には、彼の話を聞くために、例年、世界中から4万人くらいの株主が集まるそうです。

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Q16 配当金はいつ、どれくらいもらえるの?

配当金は、1株当たり○円というように表現されるのが通常で、株主総会で議決されます。株主総会はその会社の決算期の終了後2.5~3か月頃に行われ、そこで決まった配当金が振り込まれるのは、その後1か月くらいのうちになります。

配当金はその期の会社の利益の範囲内の額で決議され、支払われるのが通常です。利益のうちから配当を支払う比率を「配当性向」と云います。配当性向の大きさは会社によっても時期によっても異なります。配当金が0%の「無配」ということもあります。

1株当たりの年間の配当金をその時の株価で割った数字を「配当利回り」と云います。2.0~2.5%程度というのが平均的な水準と捉えておくと良いでしょう。

これに株主優待の商品券などを含めて考えると、現在の定期預金金利よりはかなり高い利回りになります。ただし、株式投資の場合は、元本の返還が保証されていない点は忘れないでください。

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Q17 100株しかもっていないけれど、株主優待というのは受けられるの?

株主としての権利のほとんどは持ち株比率に応じての権利ですが、「株主優待」には持ち株比率に関係なく受けられるものがあります。

「株主優待」とは、会社が株主に対して贈るもので、その会社の製品や商品のお買い物券、優待食事券、テーマパークのチケット、お米や図書カードなど、その種類は様々です。株主総会に出席してもらえるお土産も株主優待の一つです。

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Q18 株主には義務や責任はあるの?

A18 株式会社の株主の責任・義務は出資した範囲の「有限責任」とされています。株式の購入に投じたお金が返還されない可能性があるだけで、それ以上の義務や責任を負うことはありません。

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Q19 株式投資のデメリットは何?

株式投資の最大の魅力は、購入した株式が値上がりして含み益が発生することです。しかし、購入した株式の株価が値下がりすれば、含み損を抱える可能性があります。この状態で株式を売ると、損失が現実化します。

このように、株式投資のデメリットは、値上がりか値下がりか分からないというリスクがあることです。

しかし、株式投資は、ギャンブルのようにプラスとマイナスの確率が同じゼロサムの賭けではありません。取引の対象となる上場企業は、長期的に見れば、利益を出し続け、市場に長く存続できる会社がほとんどです。株式投資はプラスサムが期待できる投資です。

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Q20 株式投資の税金はどれくらいなの?

株式を保有し、配当金を受け取った場合には、20.315%の税金が掛かります。また、保有株式をその取得価格よりも高く売った場合には、その差額として発生した値上り益(税金の世界では「譲渡益」と云います)にも税金が掛かります。その税率は、配当への課税と同じ、20.315%です。

 実際に株式投資をされる場合には、NISAや積み立てNISAという制度を利用されることをお勧めします。NISAは、株式などに投資した場合に、毎年120万円までの新規投資の配当や譲渡益が最長5年間非課税となる制度です。積み立てNISAでは、毎年40万円までの投資が最長20年間非課税となります。

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【株価と情報】

Q21 テレビや新聞に出てくる平均株価って何?

A21 「日経平均株価」や「TOPIX」という名前をニュースなどで目にしたことはありませんか? これらは、株価指数という指標で、株式市場全体の値上がりや値下がりの状況を表しています。日経平均株価は主要225銘柄、TOPIXは約2000銘柄を集計対象とした統計的な指標です。

経済変動の予兆は、多くの株式の株価に大なり小なり共通して現われます。個別の株価を一つ一つ見るよりも、全体の指数を見るほうが手間が省けます。また、株式市場全体の動向は、個別の会社の業績にも多大な影響を与えます。

株価指数は、単に株式市場全体の動きを表すだけでなく、重要な経済指標の一つです。

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Q22 平均株価が2万円とかニュースで見るけれど、株価ってそんなに高いの?

証券取引所で取引の対象になっている(「上場されている」と云います)銘柄は約3,800銘柄ですが、株価が2万円を超える銘柄はほとんどありません。「日経平均株価」の2万円というのは、現実の株価水準を表したものではないのです。

 「日経平均株価」も元は現実の株価の平均でスタートしたのですが、増資や銘柄の入れ替えなど、株価が不連続になる事象に対応して継続性を維持する調整を繰り返したため、長い間に現実の株価水準から大きく離れてしまったのです。

現実には2,000~2,500円が東京証券取引所の第一部に上場されている株式の単純平均の株価です。約10分の1です。

 新聞やニュースで「日経平均株価が500円も値下がりした」と報じられたとしても、現実の株価での値下がりは50円程度と理解しておきましょう。

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Q23 株価を知るには、どこを見たらいいの?

証券取引所で株式が取引される時間帯は、前場が9時から11時半、後場が12時半から15時です。この間に株価は取引毎に頻繁に変化します。リアルタイムの情報は一部にしか提供されていませんので、一般の個人投資家はそれらを自由に見ることはできません。

ただし20分遅れの株価なら、インターネット経由で簡単に見ることができます。金融関連の情報を提供するサイトのいくつかが無料で株価情報を提供しています。以下は、東京証券取引所の株価検索サイトです。

https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/stock_search

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Q24 多くの株価が一緒に値上がりしたり値下がりしたりするように見えるのは何故?

自分の見ている株価が値上がりしている時には他の多くの会社の株価も値上がりし、値下がりしている時には他の多くも値下がりしている。そう思ったことはありませんか?

 それは、多くの株式が、日本の経済や産業全体に影響を及ぼす共通の情報に対して似たような反応をするからです。

しかし株価に影響を及ぼす情報はそれだけではありません。一部の株式だけが反応するような情報も、毎日無数に発生しています。

 天気を考えてみてください。夏は暑く、冬は寒いという季節の変化は日本列島全域に及びます。大型台風はどうでしょうか? その進路に当たる地域に大雨や強風をもたらしますが、進路からはずれた地域には大きな影響は与えません。

株価に対する外部の事象も似ています。株式市場全体に影響を与える情報もあれば、ある種の会社だけに影響を与える情報もあります。

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Q25 株価はどのような情報によって動くの?

先に説明したように株価を直接動かすのは買い手や売り手の心理状態ですが、その根本は「その会社の将来の価値に関する評価」の変化です。その会社の業績が上がると思われる情報が発生すると買い手は強気になり、より高い株価でも買おうとします。

 では、会社の業績が上がる、または下がると思われる情報とは何でしょうか? それは、経済、政治、天候・自然など、様々です。景気の状況が変わると思える情報、増税または減税の見込み、大災害の発生など、多くの事象が会社のその後の業績に影響します。

多少なりとも株式に投資をすると、そうした動きに注意を払うようになり、経済社会全体の姿が見えてきます。それは、株式に限らず、金融資産への投資に役立つ知識になります。

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Q26 株式によって値上がり・値下がりの大きさに違いが出るのは何故?

「刺激」、「体質」、「反応」という3つの要素で考えてみましょう。天候を例に、「冬になった=刺激」、「寒さに弱い=体質」、「風邪を引いた=反応」と捉えます。「冬になった」は皆に共通ですが、「寒さに弱い」は人それぞれです。そのため「風邪を引いた」は誰にでも起こることではありません。

例えば、大幅に円高が進んだとします。どの企業にも同じ為替レートで取引をしますので、ここまでは共通です。これが「刺激」です。

日本の企業の中には、国内で物を生産して海外に売っている輸出企業と、海外から物を仕入れて国内で売っている輸入企業とがあります。これが「体質」です。

その結果として、輸出企業の株価は下がり、輸入企業の株価が上がることが起こり得ます。これが「反応」です。円高は輸出企業に不利で、今後の業績が悪化する恐れがある。逆に、輸入企業の業績にはプラスの影響がある、と考える投資家の思惑がこの反応の背景にあります。

このように株価の上がり下がりという「反応」は、企業に対する外からの「刺激」と企業自身の「体質」の組み合わせによって、企業ごとに異なるのです。

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Q27 その会社の業種は何故大事なの?

「業種」は事業内容という「体質」で会社を分類したものです。

取引の対象となり得る国内の株式は何と約3,800銘柄。一つ一つ見ていったら、時間がいくらあっても足りません。似たような「体質」を持つ会社は似たような「反応」をするでしょうから、まずはそれらの会社をまとめて捉えるのが合理的です。

今後の経済社会の中で最も有望な業種は何か? その予想がはずれた時に支えてくれる業種は何か? といった具合に、まず業種を考えるのが、銘柄を選別する第一歩となります。

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Q28 「投資指標」って何?

株式への投資に際して、銘柄比較の手助けとなる指標を「投資指標」と云います。会社の財務や利益の状況、それらと株価の比率を取った指標などがあります。例えば、当期利益や経常利益の伸び率、自己資本比率、ROE、予想PER、PBRなどが挙げられます。

投資指標を理解するには、会社の利益や財務についての知識も必要になってきます。あわてずに、少しずつ理解を深めて行きましょう。

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Q29 投資指標で業績が良い会社は、株価が上がると考えていいの?

残念ながら、そう簡単ではありません。

株価は売り手と買い手の双方が納得する価格で成立します。情報の入手が容易な現代社会では、売り手も買い手も、そうした投資指標の情報は取引の時点で把握し、その上で株価を成立させていると考えます。これを「株価はその時点のすべての情報を正しく織り込んでいる」と表現します。あなたが見た「投資指標で業績が良い」という情報は、まだ誰も見ていないものでない限り、既に現在の株価に織り込まれていて、今後株価が上がるという情報ではないということになります。要するに、株価には「割安」も「割高」もないという訳です。

難しい言葉ですが、これを投資の世界では「効率的市場仮説」と云います。

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Q30 では、投資指標は役に立たないの?

幸運なことに、上記の「効率的市場仮説」は完全には成立しないとする学説があり、多くの市場関係者の支持を得ています。「行動経済学」という学問では「人は間違いを犯す」ものと考えますので、株価にも、本来の価値よりも安くなる「割安」状態、逆に高くなる「割高」状態が発生することになります。

かと言って、投資指標のすべてがいつも有効に作用するわけではありません。例えば、会社の利益の伸び率などは多くの人たちが注目して見ている情報なので、現在の株価に誤って反映している可能性は低いかもしれません。

株価の割安・割高状態は「予想PER」、「PBR」、「配当利回り」などの投資指標で判断することが多いですが、これらは株価そのものがベースとなった指標ですので、その時期・その銘柄の状態によっては株価の誤りを映し出しているかもしれません。

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【株式投資のリターンとリスク】

Q31 株式投資がうまく行ったかどうかは、何を見て判断すればいいの?

個人の場合は、自分の価値観で投資がうまく行っているか判断してまったく差し支えありません。例えば、リターンに関係なく、社会の役に立つ会社に投資をし、その会社がどれだけの社会貢献をしているかを見守るというのも立派な株式投資です。

しかし多くの人が共通して納得する尺度は、投資の「リターン」です。これは各自の資産が投資によってどれだけ増えたのかを表す指標です。株式投資の場合は、株価の値上がりによって資産が増えますが、それだけではありません。投資の期間中に受け取った配当金も資産を増加させています。投資を始めた時点で「100」あった資産が株価の値上がりで「10」増えて、配当金を「2」もらっていたら、リターンは「12%」ということになります。

このリターンという尺度は、専門家が多くの投資家のお金を預かって投資をする場合に、最も重要な指標です。

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Q32 株式投資はリスクがあるから、長く続けるのは良くないのでは?

「リスクのある物は持っていたくない」という心理は誰にでもありますよね? 無理のない質問だと思います。でも、間違いです。

確かに、株式に投資していれば一時的な値下がりは不可避です。しかし辛抱して投資を続ければ、長期的・平均的には経済の成長の恩恵を受けられるのが株式投資です。

むしろ長期的な経済成長の恩恵を無視した短期の投資のほうが、損得が同確率のギャンブルに近い投資となり得ます。

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Q33 株式市場が大きく値上がりしそうになったら投資を始め、大きく値下がりしそうになったら投資をやめるのはダメなの?

そうできれば理想で、それで成功したことを自慢する人もいるでしょう。でも、結論から言いますと、それはほとんどギャンブルです。

そうした投資手法はマーケットタイミングと呼ばれる手法で、どんなに優れた専門家でも偶然以上の確率で成功させることは困難です。

何故、できないのでしょうか? それは、株式市場全体の大きな上げ下げに関する既存の情報は、すべての投資家が常に関心を払う情報であるため、現在の株価水準に正しく織り込まれているはずだからです。その株価水準を変えるのは、今後に現われる情報だけです。それがどのような情報で、どのタイミングで現われるかが分かりません。

将来の大きな上げ下げのタイミングを当てることは不可能ではありませんが、それが当たる確率は非常に低いと思ってください。正にギャンブルです。

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Q34 テレビや新聞で株式市場の予想を語る専門家の話は信用できないということ?

いいえ、そうではありません。結果として当たらないことも多いでしょうが、経済動向をどう分析してその予想に辿り着いたかの説明は聞く価値が大いにあります。

「100%の確率でこうなる」と予想している専門家など、そもそも存在しません。様々な可能性を分析して、その中で最も確率が高いと思う予想を語っているのです。それが100%の確率のように聞こえるかもしれませんが、その人にとっては一番高い確率の予想でも20%程度の確信かもしれません。全部を説明する時間も文字数も与えられていない中で、最も確信の高いものを語っていると理解しましょう。

予想に至った理由として専門家が語る内容は、自分なりの投資判断を下すのに大いに役に立つはずです。その後は、自己責任です。

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Q35 株式投資を長期に続けるメリットって何?

「複利」という言葉はご存じですね? 当初の元本だけでなく、途中で得られた利益も、それが元本に加わってその後の利益を生む仕組みです。

例を挙げましょう。今、100万円の資金を、一つはリターンが年1%、もう一つは年10%の投資に投じたとしましょう。10年後には、年1%のほうは約10.5万円の増加、年10%のほうは約159.4万円の増加となります。20年後には年1%のほうは約22.0万円、年10%のほうは約572.7万円の増加になります。年1%と10%とでは、リターンは1:10の関係ですが、増加額は10年で1:15、20年で1:26の関係になります。

高いリターンの投資ほど長く続ける効果が大きいのです。

少額からで構いません。株式投資は、早いうちから始め、長く継続するほど、メリットが大きいと理解してください。

先の10%は、1%と比較しやすい数字を持ってきただけです。株式投資でこれだけ儲かりますよという例ではありませんので、注意してくださいね。

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Q36 老後の生活のための資産形成は銀行預金のほうが安心なのでは?

あなたの現在稼いでいるお金や会社の給料が十分に高い水準で、毎月多くのお金を蓄えることができるのなら、銀行に預金をしておくだけで安心していられるでしょう。

少しシミュレーションをしてみましょう。30年後に2,000万円の老後資金があれば安心であるとします。利息年0.1%の銀行預金に毎月5.5万円を積み立てると、30年後には2,000万円を超えます。安心できますね。

でも、もし毎月3万円を積み立てるのがやっとであったらどうでしょうか? 銀行預金での30年後の積立額は1,100万円程度です。老後に必要な金額の2,000万円には確実に足りません。

もし毎月3万円を株式投資に回して、平均して年4%のリターンを挙げることができたとすると、30年後には2,000万円を超えています。期待を下回って、平均して年に3%のリターンだとすると、1,750万円です。もちろんこれ以下の可能性もありますし、銀行預金の場合を下回ってしまうかもしれません。

でも、毎月3万円積み立ての銀行預金と株式投資を比べた場合、リスクを取らない銀行預金のほうが老後は安心と言い切れますか?

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Q37 株式投資のリスクって、具体的にどれくらいなの?

ざくっと言って、年率15~30%と思ってください。正直に言ってかなり大きな数字です。

年率4%が期待できる投資のリスクが20%だとすると、リターンがマイナスになってしまう確率は約42%もあります。

しかし、リターンが10%以上になる確率も約40%あるのです。証券投資におけるリスクとは、投資の結果が不確実なことを云います。損をする可能性だけでなく、期待以上に大きなリターンが得られる可能性も含めてのリスクです。

余談ですが、「ハイリスク、ハイリターン」という言葉を「大きなリスクを取れば、大きなリターンが得られる」と解釈している人がいますが、「大きなリスクを取ることなしに、大きなリターンは得られない」と云うのが正しい理解です。ハイリスクはハイリターンを約束するものではありません。

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【株式のポートフォリオ】

Q38 ポートフォリオって何?

証券投資における「ポートフォリオ」は、証券を組み合わせたものを云います。株式投資の場合は、投資または保有する複数の株式の固まりを意味します。

証券投資において「ポートフォリオ」という言葉は、「呪文」のようなものです。一つ一つの証券が持つリスクが、ポートフォリオの中に入ると、部分的に消えて無くなるのです。

しかも、1銘柄よりも2銘柄、2銘柄よりも3銘柄と、保有する銘柄数を増やすほど、リスクは小さくなって行きます。資金に余裕があるなら、同じ銘柄を多く保有するのではなく、複数の銘柄に振り分けることを考えましょう。これを「分散投資」と云います。

残念ながら、リスクが小さくなる度合いは段々薄れて行き、いくら銘柄数を増やしてもリスクがゼロになることはありません。しかし、「分散投資」は株式投資の鉄則です。

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Q39 何故、複数の銘柄を持つとリスクが小さくなるの?

その秘密は相関係数です。相関係数は2つの事象が同じ方向に動く度合いを「-1」から「1」までの範囲の数字を表したものです。まったく同じ方向に動く場合は「1」、まったく逆に動く場合は「-1」になります。

例えば、それぞれがリスク20%で、互いの相関係数が「0」の株式XとYがあったとします。どちらかを保有する場合のリスクは20%ですが、XとYを半分ずつ保有するポートフォリオのリスクは約14%になります。リスクが6%ポイントも減る計算です。

XとYの相関係数が「0.5」の場合はどうでしょうか? 計算過程は省きますが、ポートフォリオのリスクは約17%です。

このように、相関係数の小さな銘柄同士、すなわち株価の動く方向がなるべく不揃いな銘柄同士が組み合わさるとリスクが小さくなるのです。株価の動きがまったく一致する銘柄はありませんから、銘柄数が増えると大なり小なりリスクは低下します。

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Q40 リスクを小さくするためには、株式の銘柄をどう組み合わせたらいいの?

理屈は簡単です。相関係数のなるべく小さな銘柄同士を組み合わせるのです。とは言っても、どの銘柄とどの銘柄の組み合わせの相関係数が小さいかなんて分かりませんよね?

逆に考えてみましょう。相関係数の大きそうな銘柄同士の組み合わせを避けるのです。

例えば、同じ業種で互いに取引関係の強い銘柄同士は株価の相関が高い可能性があります。取引関係が強くなくても、同じ業種であれば、経済環境や業種関連の規制の変化などに同じ方向の反応をすることも多いでしょう。

また、業種は異なるとしても、輸出を主体とする業種同士の場合は、為替の大きな変化に対して、その業績が同じ方向にぶれる可能性があります。

このように、株価の動きが同じ方向を向きそうな銘柄の組み合わせを避けるのが、ポートフォリオのリスクを小さくする秘訣です。

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Q41 株式のポートフォリオには、何銘柄を入れたらいいの?

プロのファンドマネージャーが運用する株式ポートフォリオでは100銘柄以上を保有するのが普通です。数百銘柄を保有することも珍しくはありません。

しかし、これらは資金規模の大きなファンドの運用の話であって、個人投資家にはそれは現実的ではありません。

 「投資の神様」と呼ばれた伝説のファンドマネージャーであるピーター・リンチは、こう言っています。「株式の保有は子育てのようなものである。世話ができる以上に持ってはいけない。株式投資を職業としない者には、継続的に観察し、適切な時期に売り買いできるのは8~12銘柄程度だろう。ポートフォリオに含む銘柄は5銘柄を超えてはならない」。これが世界最大のファンドを運用していたリンチの言葉ですから、ちょっと驚きです。

インターネット経由で企業の情報などが簡単に手にはいる現在は、もし資金と時間に余裕があるなら、もう少し多くの銘柄を保有しても良いように思います。

また、株式の分散投資は、投資信託をうまく利用することで図れます。ポートフォリオのうち、手作りが難しい分野への投資は専門家が運用する投資信託を使うのです。

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【資産配分と株式投資】

Q42 投資に回せるお金はすべて株式に投資したほうがいいの?

それは乱暴過ぎます。

株式や銀行預金などの資産に自分の資金をどう配分するかを「アセットアロケーション(資産配分)」と云います。その基本は、自分が許容できるリスクの大きさに応じて配分を決めることです。

株式は、リスクが比較的大きい一方で長期の投資に適した資産ですから、何年間も使わずに置いておける資金の範囲で保有すべきです。

老後に備えた資産形成でも、定年間際の人と若い人とでは事情が異なります。老後のために蓄えた資金を生活費として取り崩す時期が近いような方は、銀行預金などリスクの小さな資産に十分な金額を振り向けて置くべきです。一方、若い人が老後に備える場合は、時間がたっぷりありますから、株式を主体とした投資を積極的に考えたいですね。

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Q43 株式の投資信託に投資するほうがいいのでは?

考え方次第ですね。

投資信託には様々なメリットがあります。1万円程度の少額の資金からでも始められますし、専門のファンドマネージャーが運用をしてくれます。金融機関が破綻した際の資産の保全もしっかりしています。

まだ株式の知識が少なく、個別の株式を選ぶ自信がない。知識はあるけれど、株式投資に割ける時間がない。株式には投資をしたいが、自分で株式を選ぶことには関心がない。こうした方は、株式投資信託を購入するのがいいと思います。

しかし、問題もあります。株式投資信託の商品数は数百本に及びます。その中から、自分に合った商品を見つけるのは、個別の株式を選ぶのと同じように大変です。

個別の会社や株式については、インターネット経由で多くの情報を得られますし、銘柄選択のソフトも一部無料で開放されています。しかし、投資信託については第三者が提供する投資指標の情報はほとんど見られません。銘柄の選択を助けてくれるソフトも貧弱で、ETFという一部の投資信託か、そのソフトを提供する金融機関の商品しか選べないものがほとんどです。

結局のところ、株式投資信託を選ぶ際にも、株式投資の基礎知識は欠かせないのです。 

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Q44 株式の投資信託の賢い利用の仕方は?

世界中の情報がインターネットで簡単に集まる現在ですが、海外の株式の情報収集には言葉の壁もあります。経営者の声を直に聴く機会も少ないでしょう。海外の株式への投資は、やはりその分野の専門家が運用する投資信託に頼るのが得策のように思えます。

株式に投資する際にも「分散投資」は鉄則です。分からないから海外の株式には投資をしないという考え方ではなく、分からないから海外株式の専門家に任せるという考え方をするほうが合理的ではないでしょうか?

株式投資で投資信託を賢く利用する方法の第一は、海外株式への投資に利用することだと思います。

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