I-13.株式指数

株式投資の参照指標として株式指数は重要です。しかし近年の株式指数は参照指標以上の意味を持っています。株式指数自身のパフォーマンスを投資成果とするETFなどの金融商品が存在感を大幅に増しているからです。当然のことながら、授業ではそうした視点で株式指数を論じることが欠かせません。
この講義の冒頭は、CAPMにおける市場ポートフォリオのおさらいと株式指数に関連するいくつかの用語の調査です。社会人経験のない学生は金融用語をあまり知りません。例によって、スマホから「金融リテラシー.COM」を通して用語集のサイトなどにアクセスさせ、調べさせます。

株式指数の講義の本題として、まず主な株式指数を紹介し、その発展の歴史を概観するところから始めます。米国のダウ工業株30種は1890年代に生まれた指数であり、120年経った今でもその原型が残り使われているという恐ろしい代物です。株式指数は、もちろんこの120年のうちに進化し、新しいものが多く生み出されてきました。それなのに、120年前の指数が新しい指数に駆逐されずに残っているのです。そうした不思議さに溢れているのが、株式指数の世界です。

株式指数の具体論の最初は、もちろんダウ工業株30種に代表される「株価指数」です。日本では「日経平均株価」が最も知名度の高い株式指数として君臨しています。
当然のことながら、これらの指数には大きな不備があるのです。しかし、それは構造上の問題であり、一般の人には欠点として認識させていません。そうした状況ですが、大学教育では、この点もきっちり教える必要があると思っています。演習を交えて、「株価指数」の構造について考えさせるのが、この項目の課題です。

時価総額加重指数は、年金基金などの機関投資家の台頭とポートフォリオ理論の浸透に合わせて普及してきました。機関投資家がパフォーマンスを比較参照する指数には、彼らが投資しているポートフォリオと同じような属性を備えている必要があり、30銘柄の平均株価では用が足りないのは明らかです。米国ではS&P500種指数、日本ではTOPIX(当時の名称は東証株価指数)が1900年代中頃に生まれました。
授業では、これらの指数の構造について説明し、演習でそれを確かめさせます。「平均株価指数」との違いを理解することが学生にとっての最低線です。

時価総額加重の株式指数は理論的には優れたものでしたが、資産運用の実務に用いる中で、問題が浮かび上がってきました。「浮動株」の取り扱いの問題です。株式として発行はしているが、実際に取引可能な株数が少なく、機関投資家のポートフォリオに組み入れる際に不利な価格でしか売ってもらえない、買ってもらえないという状況が深刻さを増して来たのです。
授業では、「パルコ」の株主構成を例に、浮動株の問題を提起します。貸借対照表を合算した概念も示し、間接的な持ち合い関係も問題であることを論じます。最後に「株式指数の浮動株調整」を解説して、株式指数の講義を終了します。

以上で前期の講義は終了です。第14回目の講義では、過去13回の講義の振り返りを行いました。
そして、株式学習ゲームのまとめです。実は、この1か月前に「12銘柄の縛りをはずすので、何でも好きな銘柄と入れ替えてよい。銘柄数も5銘柄以上、何銘柄組み入れてもよいので、トップ5を目指すように」と号令をかけていたのです。じっと耐えた者、大量の銘柄を追加購入した者のほかに、「日経平均のダブル・インバース」というトリッキーな銘柄に挑戦した者もいました。過去3か月の相場環境を振り返るとともに、そうした取り組みのいくつかを紹介し、最後に表彰を行いました。

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