I-11.ポートフォリオの理論(2)

さあ、ポートフォリオ理論の本丸の「ポートフォリオの期待リターンとリスク」です。前にも言いましたように、大学教育としてのポートフォリオ理論の講義では、文系学生の最も嫌がる数式を使った説明を避けて通れないと考えています。相関係数がリスクにどのように影響を与えるかのメカニズムを知ることが、この理論を理解する鍵だからです。
自分自身で手を動かして、数式を書かせることから始めます。予想通りですが、学生のノリはよくありません。アクティブ・ラーニングとして成功したとは言えません。別の方法を考えるべきなのでしょうね。

まず2つの株式の組み合わせから、始めます。その組み合わせ比率に応じてポートフォリオの期待リターンとリスクがどう変化するのかを確認するのです。ここに相関係数および共分散という概念が登場します。もし2つの株式の同調する力が強い場合にリスクが高くなるとすると、逆に2つの株式の反発する力が強い場合にはリスクはどうなるのでしょうか?
この講義では、その関係を数式とグラフで確認しながら、株式を3銘柄に増やし、さらにはもっと多くの銘柄のポートフォリオの状態を類推します。同じリスク水準のポートフォリオが多数あった場合に、投資家に選ばれるのは、もちろん最も期待リターンが高いポートフォリオです。

「フリー」という言葉は「~から解放された」状態を表すのに使われます。「リスクフリー資産」は「無リスクの資産」の意味です。市場には厳密なリスクフリー資産は存在しませんが、大手銀行の普通預金を頭に描いてもほとんど支障ありません。
株式で作ったポートフォリオとリスクフリー資産を組み合わせると、また違った期待リターンとリスクの関係が浮かび上がってきます。

ポートフォリオの期待リターンとリスクの選択では、同じリスク水準なら期待リターンの高いほうのポートフォリオを選択する、その結果として上に凸の「効率的フロンティア」と呼ばれるポートフォリオ集合が導き出されました。しかしこれだけでは、一つのポートフォリオを選ぶことはできません。そこで登場するのが、先週説明した「効用無差別曲線」です。
投資家のリスク回避の強さによって効用無差別曲線の形は異なりますが、下に凸であることに違いはありませんので、効率的フロンティアと1点で接します。それが投資家が選択すべき「最適ポートフォリオ」なのです。

https://kinyu-literacy.com/wp-content/uploads/2018/08/Equity_Investment_Theory_11.pdf

金融リテラシーが身に付く投資学習ナビ「金融リテラシー.COM」へ戻る